最悪の第一印象

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 上京したての18歳の春、キャンパスで”彼”を初めて見た時「あ、無理そうな人だな」と思った。

まだ一言も言葉を交わしていない、単純な見た目での第一印象だ。

黄金色に輝く髪、随所に散りばめられたシルバーアクセサリー、妙なファッション雑誌から飛び出てきたような服。

悪い意味で目立ってた。
地元に腐るほどいた輩達とも少し違う、なんとも言えない存在感を放っていた。

「人を見た目で判断するな」とはよく言うが、違う人種感があまりにも強すぎた。

悪い人ではないかもしれないけど、仲良くなるのは絶対無理そうだ。

あの日の事を思い出すと、今でも彼が親友だなんて信じられない。

親友

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だけど、親友になってしまった。

新入生のオリエンテーション的なイベントでたまたま近くの席になり、話しかけられてしまい、そのままズルズルと今に至る。

誰しも、自分の人生を語る上で外すことのできない出会いがいくつかあるだろう。

俺にとってその一つが彼との出会いだ。
彼と過ごした時間は信じられないくらい楽しいモノだった。地元から遠く離れ、友達ゼロのスタートでもなんとかやっていけたのも、彼の存在が大きかった。

お互い結構変わったはずなのに、未だに会えばあの頃のように何も変わらず語り合える。

親友と表現できる数少ない友達だ。

嫌われる要素満載

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ただ、彼は嫌われ者だった。
大学時代、彼以外にも友達はそれなりにできたが、結構な確率で彼の事を嫌っていた。

「アイツが来るなら行かない」なんて言われるのもしょっちゅうだった。

「口が悪すぎる」「調子乗ってる」「偉そうでムカつく」とかそんな理由が多かっただろうか。

俺に勇気がなかったのもあるが、あまり言い返す事ができなかった。その感想は決して間違っていない。そう判断されて当然だと思う。

彼の言動はあまりに人に傲慢な印象を与え過ぎた。チンピラファッションもその印象を増幅させていた。

虚勢

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親友として擁護するとしたら、彼は凄く臆病な人間なのだと擁護したい。

強い人間を装って弱みを見せないでいたが、あまりにひた隠しにし過ぎた。

彼は虚勢を張り続け、嫌われ、それでも「嫌いになるならそれで結構」と更に虚勢を張った。

でも俺は知っている。深酒した時によく漏らしていた。

自分が嫌われていないかどうか、たまに気にしてた。心を許した女にフラれて「何が悪いんだ」と泣きじゃくってた事もあるし、俺が極稀に誘いを断るとかなり動揺していた。


正しさは人を傷付けるけど

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そんな彼を、何故俺は好きでいられたのか。

多分、彼がそんなに間違った事は言っていないと思えたからだと思う。

彼の思想には共感できる事が多かった。彼の言ってる事は正しいと思える事が多かった。

多くの人は「こいつなんかムカつく」と嫌悪感を覚え、やがて距離を取ってしまっても、俺は正しさに共鳴していた。

だから彼も俺には心を開いて色々話せたのだと思う。俺個人に対してはそんなにキツい事は言わなかった。

そう言う意味では、全く違う人種のようで実は結構似た者同士だったのかもしれない。

どれだけ多くの人に嫌われていようとも、彼のコミュニケーション方法に問題があると分かっていても、それでも俺にとってはかけがえのない親友だ。


勇者ではないかもしれないけど

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そしてある意味、羨ましかったのかもしれない。

人間関係を気にするあまり自分の意思を表明できないなんてのはよくある話だが、虚勢を張っているとは言え、彼は堂々と表明する。結果的に嫌われ、なんだかんだ自分が傷付く事になっても・・・

ちょっと前に流行った「嫌われる勇気」とやらを持っているように見えた。

逆に、自分で言うのもなんだが、彼は俺の弱み丸出しな所が羨ましかったのかもしれない。

俺は弱みを見せる事がそんなに嫌じゃなかったし、割とオープンにしていた。「虚勢を張らない勇気」とでも言えばいいのだろうか。

互いに、自分に無いものを持ってる相手に密かなリスペクトがあったのかもしれない。