幸福感を得る為のハードル

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先日、離職率が高い企業に勤めている友人と飲んだのだが、彼がその時に漏らした言葉が胸に深く突き刺さった。

「絶対殴られない上に金もらえるって良い環境だと思うけどなぁ」 

まさに洗脳されし社畜、奴隷の言葉。社会にその手の企業が蔓延る訳だ。

確かに給料はいい。でも離職率が高い。大体どんな企業か察する事ができる。
割と有名な企業なので噂を耳にしたこともあるが、多分その噂は事実だ。

「もっとまともな労働環境はあるのになぁ・・・」と思ったが、そこで気付いた。
 
それでも彼は幸せなのだ。

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高校大学とスポーツ名門校で寮生活を送り、厳しい上下関係、鉄拳制裁、シゴキ、朝早くから夜遅くまで気が遠くなるような練習、その後は深夜まで雑用と軍隊のような環境を生き抜いた彼の経歴から、強がりや自己肯定ではないことが分かる。 

ハタから見れば地獄に思える環境も、彼には「絶対殴られない」「給料をもらえる」と言う二点をもって天国なのだ。

その違いは、幸福感を得られるハードルの高さ。

ブラック企業を肯定する訳ではないが、幸福感を得る為のハードルが低いほど幸せになれる可能性は高くなるのだろう。

容姿のハードルを下げた親友

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まだ19歳の頃の話だ。

親友の部屋に遊びに行ったら、ギョッとするような光景が目の前に広がった。

かなりの熟女や肥満体型の女優が出演するAVが散乱していた。総じてブス。とてもオカズになるとは思えない。

親友はそんな趣味ではなかったはずだ。これまで付き合っていた娘も皆綺麗な人だった。好きな芸能人も新垣結衣とか長澤まさみとかだったはずだ。

尋ねると、神の啓示でも受けたかのように目をキラつかせ語りだした。

「ストライクゾーン広げた方がいい女に当たる確率高くなんね?」

理屈はわかる。理に適っているとも思う。

男のシステムとして、まず真っ先に性的興奮ができない女は弾く。でも、弾いた中にもきっと性格のいい娘が居たはずだ。

だから、ストライクゾーンを広げる。ハードルを下げる。

彼はその為の訓練をしていた。
どんな顔でも体型でも性的興奮できるようになると強く誓っていた。

余談だが、彼は訓練の成果が出た。その言葉通り幸せになった。出産を経て体型が変化しても何も問題なかったようだ。

残念ながら俺はそのハードルは下げれなかったし、真似しようともしなかったが・・・

日常生活のハードルを下げた両親

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嫌味な言い方になるが、俺はそれなりに裕福な家庭で育った。世帯収入は、どのデータを見ても平均的な数値を大きく上回っていた。

だが、実感は全く無かった。

セレブな方々がよく語る世間知らずの嫌味な話ではなく、本当に周りと大差なかったと言うか、下回る箇所も多々あった。

家はごく普通の家。

自家用車は長年カローラで、何度か乗り換えているが今に至るまで常にそのクラス。

お小遣いも小学生の頃は学年×100、中学生の頃は学年×1000。好きなものを買ってもらえるのは誕生日とクリスマスの年2回。

家族のファッションもごく普通、日常の買い物は皆が集まるスーパーマーケット。当然食卓に並ぶ食事も健康的ではあるが「豪勢」なんて言葉とは程遠い。


正直、あの頃は他の家庭が羨ましく感じる事が多かった。


妥協の感覚無く幸福感を得られる

幸福感を得る為のハードルを下げる事を「貧乏臭い」と言ってしまえばそれまでだが、結果的に俺は今助かっている。

例えば、家。

一般的に家賃は「収入の3分の1」が目安だが、俺はそれ以下。下手したらそこらの学生やフリーターよりも安い。

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仕事の関係上、交通の便と宅配ボックスだけは拘ったが、後は特に無し。

風呂トイレ一体型でも構わない。狭くても飯食って寝る程度のスペースがあれば問題無い。

今、部屋をぐるりと見渡しても目に入るのはテレビ、パソコン、ベッド、テーブル、本棚、冷蔵庫、クローゼットの服くらいだ。

あと、これは東京都心部と言う立地的な事情もあるが、マイカーへの憧れも無くなった。

都心から少し離れればマイカーを保有しての生活も充分可能だが、それにも魅力を感じない。

今の俺にとっては都心部に居る事のほうが遥かに利点が多い。

駅も近いし、タクシーはガンガン走ってるし、近所にカーシェアステーションがいくつもあるので今の所困ったことが無い。

同世代の連中からも「貯金できない」「金が足りない」「削らなきゃ」なんて声が平気で聞こえてくるが、俺は理解こそできるものの共感できない。

「そりゃそうなるだろ・・・」と感じてしまう。

「削る」と言う感覚を抱く、それ即ち妥協。

幸福感を得る為のハードルが高いと言う事だ。

一般的な水準より低くても満足できる事で、その分他に金を回せる事は大きなメリットだと思っている。

一度上がったハードルは簡単に下げれない

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「上がった生活水準を戻すのは苦労する」ってのは本当だと思う。

世間知らずと言う側面もあるだろうが、スポーツで財を成したスター達が引退後に破産する確率は信じられないほど高い。特にアメリカは現役時にケタ違いの額を貰える反動もあってか、破産率が凄まじい。

青春の全てを軍隊生活に捧げた彼も、19歳にして全てのオカズをゲテモノに切り替え修練を積んだ彼も、幼少期から贅沢を切り離して育った俺も、ハードルを下げる作業中は幸福感があまり無かったと思う。

ただ、一度下げてしまえば楽になれる。
容易に幸福感を得られるようになり、感謝の幅もグンと広がる。

下がった後のメリットを考えれば、少し苦しい思いをしても下げる訓練をする価値は充分あると思う。

ハードルが下がれば配分が変わる

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振り返れば、全部が全部ハードルを下げていた訳ではない。

他に較べて金を使ってると思える所はいくつかあった。

まず、ハワイやグアムのようなリゾートをはじめ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア・・・我が家は毎年のように海外旅行に行っていた。

高校は公立だったのでどうと言う事はなかったが、大学受験から卒業までの金銭面でも救われた。

経験者なら分かると思うが、大学受験は受験料だけで結構な額になる。そして、日程に頭を悩ませる事になる。

「滑り止めの入学金納入締め切り日が、第一志望の合格発表日より先」と言うケースが発生するからだ。記憶が定かではないが、確か入学金の相場は20~30万円くらい。

だが、両親は「受けたい数だけ受けろ、思いっ切り的は広げろ」と言い放った。「無駄金払ってやるから挑戦しなさい」と背中を押してくれた。結局無駄金を払う事にはならなかったが、とてもありがたかった。

勿論4年間の学費も奨学金を借りることもなかったし、携帯代と遊ぶ金以外の生活費も全て支払ってくれた。

大好きだったスポーツに関しても金を惜しみ無く使ってくれた。

手入れを徹底すると言う条件付きではあったが、子供ながらに目玉が飛び出すような値段の道具も躊躇無く買ってくれたし、チリも積もればなんとやらな練習施設使用料もいつもポンと出してくれた。

我が家の投資ポイントは教育(旅行)とスポーツだった。そしてそれは、今の俺の配分と同じだ。

それでも当時は、頼めば娯楽品を買ってくれる親の方がよっぽど羨ましかった。カッコいい車に乗ってるパパが憧れだった。

本当の意味で両親のやっていた事を理解し、感謝できるようになったのは遠い未来、割と最近の話だった。

高いコストを支払わなければ得られないもの、絶対に惜しむべきでない所に投資をできるよう、金をかけるポイントを見極め、絞る。

そして他のポイントで幸福感を得る為のハードルを下げる訓練をする。

何から幸福感を得るかの価値観は人それぞれかも知れないが、自分では割とハズれない考え方だと思っている。