バトルロワイアル

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もう何年前になるだろうか。

問題作として強烈な批判を浴びたバトル・ロワイアルと言う作品がある。

バトル・ロワイアルは原作が小説で、漫画化・映画化されているが、映画版は原作と内容がかなり異なり、原作は画像が無い。

よって便宜上、今回の記事は漫画版の内容で綴る事にする。


「独裁国家で政府主導の下、ランダムに選出された中学3年生の1クラスが優勝者の1人が決まるまで強制的に殺し合うプログラムを行う」と言う過激な内容だ。

このプログラムはよく考えられたもんで、まず生徒は僅かな食料と水と武器(ランダム)と地図や時計等の入ったバッグを渡される。

そして、外すことのできない首輪を装着させられる。

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この首輪は生死を電波発信で確認でき、遠隔爆破可能。逃亡したり政府に反抗しようとすると首輪を爆発させられる。

更に、プログラムが進行するにつれ立ち入り禁止エリアが島内放送で告知されていく。

立ち入り禁止エリアに立ち入ると、首輪が爆発する。

生徒を移動させ遭遇率を高め、殺し合いをさせる為の措置だ。

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(F-1など黒い網目がかかったエリアが立ち入り禁止エリア)

当然、プログラム開始直後に、プログラムを管理する政府の居るエリア(G-7)は禁止エリアに指定される。

そして、24時間連続で死亡者が出ない場合、生徒全員の首輪が爆発する。

あとは自由。食事も睡眠も潜伏も殺害方法も自由。

バトル・ロワイアルは、こんなイカれたプログラムを描いた作品な訳だが、これが結構面白い。

積極的に殺しに行き優勝を目指す者、自殺を選ぶ者、とりあえず仲間を作ろうとする者、どうにかしてプログラムからの脱出を図ろうとする者・・・極限状況で各々の思惑が交錯する。

三村信史

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脱出を試みた生徒の1人、三村信史は作中屈指の人気キャラクター。

反体制派の叔父(政府により暗殺)に育てられ、ハッキングの達人。

運動神経バツグンの天才バスケットマンかつ切れ者で、中学生離れした知識量を誇る。

腕っ節も強く、中学生にも関わらずひとりで高校生の不良2人を瞬殺した事がある。

絵に描いたような有能キャラクターだ。

結果から言うと、三村はプログラム中盤で無念の死を遂げ脱出は失敗に終わるのだが、俺は三村の死から「信用」について強烈に考えさせられた。

瀬戸豊

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彼は三村の親友なのだが、プログラム序盤で運良く三村と合流に成功。親友同士、協力して脱出を目指す事となる。

見た目で大体察すると思うが、能力的には三村に較べて遥かに劣る。って言うか平均的な中学生レベルを下回る弱者だ。

体格、腕っ節、運動神経、頭脳、度胸は勿論の事、支給された武器も三村がピストルなのに対し、瀬戸はフォーク。運まで悪い。

闘う意志を持った誰かと遭遇してしまえばジ・エンドと言ってしまっても過言ではない。

そう言う意味では、優勝ではなく脱出を目指しており戦闘の意志も無いスーパー中学生の親友・三村とプログラム序盤で合流できた瀬戸はかなり運が良かった。

脱出プラン

タッグを組んだ三村と瀬戸は、幾度かのミスや不運に見舞われながらも、脱出へのプランを進行していく。

このプラン、簡単に説明してしまうと「禁止エリアを跨いでロープを張り、ロープウェイ方式で爆弾を政府の連中が詰める校舎に落とす」と言うものだ。

まず、タコ糸を禁止エリアを迂回しつつ禁止エリアの上空に張る。

画像左の森の木々に引っかからぬよう、タコ糸を結びつけたバルーン(民家で見つけた変声スプレーのヘリウムガスを注入したゴミ袋)を飛ばす。

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そして、タコ糸の端をロープに結びつけ、画像上の岩場に移動しタコ糸を手繰り寄せ、ロープを禁止エリア上空に張り、爆弾ロープウェイを完成させる。

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政府の連中を首輪を管理するコンピューターもろとも爆弾で吹っ飛ばし、首輪を無効化。

潮流に乗って泳いで島を脱出し本州に上陸し、銃で民間人を脅して船や車を奪って逃走・・・

見張りの船や上陸先で発見されるリスクはあるが、もうこれしかない。

ちゃんと一発勝負で校舎に爆弾を落とせるのかも疑問だが、ともかく三村と瀬戸は島中から材料を探しまわり、校舎を半壊させるほどの威力を持つ爆弾を完成させる。

勿論、このプランは三村が練り上げたもの。爆弾作成のノウハウまで持ってる中学生は恐ろしい。

飯島は信用できない

そして、爆弾を落としに出発・・・と言う所で、飯島と遭遇する。

極限状況で暗闇と孤独の中、友人の三村と瀬戸に会えた飯島は安堵する。
瀬戸も、飯島の加入を歓迎する。

しかし三村は、飯島に銃を突き付け「お前は信用できない。どこかに消えてくれ」と言い放つ。

一応、三村は飯島と友人ではあったが、過去にゲーセンで不良に絡まれた時に飯島は加勢に入るでもなく通報するでもなく、ただ狼狽えていた。

更に「三村が絡まれてると知らなかった」と見て見ぬフリをされる・・・と言う出来事があった為、不信感を抱いていたのだ。

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「平和な日常ならともかく、極限状況では些細な不信感が命取りになる」と言う至って筋の通った理屈だ。

飯島もその件には罪悪感を感じており、即座に謝罪した。
更に「瀬戸は俺より色んな能力が低い。俺のほうが使える」と説得する。

だが、「自分が助かる為なら他人を貶める。お前のそんな所が信用できないんだ」と三村はバッサリ切り捨てる。

しつこく迫る飯島に威嚇射撃をかまし、瀬戸と共に去ろうとする。

飯島を信用できず殺害

しかし、それでも飯島は諦めない。もう、たったひとりで恐怖に怯えながら過ごす事に耐え切れなかった。

「ひとりにしないでくれええええ」と再度駆け寄る。

三村、即座に振り向き2発目の威嚇射撃をするも手元が狂う。

見事なヘッドショットで、飯島を殺害してしまう。

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瀬戸は激しく動揺した。「殺すほどの事か」「飯島だってこんな状況で気が動転してたんだ」と責め立てる。

三村は「不信感を抱いていた。武器を隠し持っていたかもしれないから、威嚇射撃したら手元が狂った・・・」と必死に説明する。

状況が状況だ。結果的に殺してしまったが、仕方無いとも言える。

だが・・・

弱者を信用しない三村を信用できない

今度は瀬戸が三村に不信感を抱く。

無理もない。必死に仲間に入れてくれと武器を捨て懇願する友人を、目の前で射殺されたのだから。

飯島の死体やカバンを検めても凶器は何一つ出てこなかった。

三村はゲーセンの件を説明し、自らの判断の妥当性を理解してもらおうとする。

が、瀬戸は「こんな状況じゃなくても、三村は人を信用しなかった」と切り返す。

なんでも、球技大会のバスケの決勝戦で、下手なりに一生懸命やっていた瀬戸や飯島にパスを回さず、三村ひとりの力で優勝を勝ち取ったらしい。

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「三村は弱者を心の底から信用してくれない。ヘマをする僕をいつか信用しなくなり飯島のように殺すんだ」

と言う。

運動神経のいいクラスメートが別競技に参加していた為、バスケは手薄となっており、優勝がかかった大一番に勝利する為には自分が・・・

と言う三村の判断に、弱者側が強者の親友に強烈な劣等感を抱くのも無理はないだろう。

信用が無くなったらゲームオーバー

三村は瀬戸を信用しているつもりだったが、信用できていなかった。

瀬戸を信用できていないから、瀬戸の信用を勝ち取れなかった。

ここ一番で、親友に信用してもらえない。

冷静沈着な三村が、友に信用されない辛さ、孤独の中でようやく見つけた友に一切信用されず殺された飯島の痛みを噛み締め、ショックで棒立ちになり涙を流す。

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三村はここで、自らの運命を悟る。
この状況では信用を失ったらゲームオーバーだと理解していたのだ。

瀬戸に銃を渡し「信用できないなら今ここで俺を殺せ」と告げる。

いや、三村は信用していた

瀬戸は、三村の涙を見てハッと我に返る。

そう、三村は瀬戸を信用している。信用してきた。

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無能な瀬戸の「能力」に関しては信用したくてもできなかっただけだ。

しかし、この極限状況でも三村は瀬戸の「人間性」を信用し、手を差し伸べている。

能力よりも人間性を重視・・・極限状況ではない日常は勿論、ビジネスでもそうかもしれない。

当然、三村には瀬戸を駒として利用してやろうなんて気もない。

瀬戸を仲間に加え行動を共にした事はもちろん、瀬戸が能力の低さ故に致命傷になりかねないミスをいくつ犯しても快く許してきた。

有能な自分の足を引っ張る瀬戸を切り捨てなかった。

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体力の弱さから睡眠不足で集中力を欠き、物音を立てたり灯りをつけてしまったり、ウトウトして見張り中に寝てしまうと言うミスを犯す。

三村はそんな瀬戸を気遣い、タイムリミットが迫る中でも睡眠をとらせた。

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爆弾作戦の前に、三村は政府のコンピューターにハッキングをかけ首輪を無効化しようとしていた。

瀬戸にそれを説明したら、首輪に盗聴器がついておりハッキングを阻止されてしまう。

これに関しては、盗聴に気が回らずペラペラ喋ってしまった三村にも落ち度があるが「瀬戸が居なければ・・・」なんて思ってしまう読者も居ただろう。

しかし三村は、そんな事よりも瀬戸に出会えた事に感謝している。

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爆弾をロープで滑らせる為の滑車を紛失してしまうと言う致命的なミス。

タイムリミットが迫る中、三村はそれでも怒りを抑え、リスク覚悟で懐中電灯を使い手分けして滑車を探す。

度重なるミスを詫びる瀬戸に、このセリフ。

飯島を殺してしまったのも、必死に我が身と瀬戸を守ろうとしての事だ。

そんな三村の優しさを思い出した瀬戸は、自分を奮い立たせ、三村に銃を手渡し信用を示す。

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そして「飯島の痛みも三村の辛さも一緒に背負う。三村とはずっと親友だから。さぁ爆弾投下しに行こう」と励ました。

三村は、感極まり思わず瀬戸に抱きつく。

信用不足が全滅を招く

しかし、そんな感動的なシーンがサブマシンガンの掃射で一瞬にして吹っ飛ばされる。

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桐山和雄と言う、優勝目指してサブマシンガンで殺戮を繰り返す生徒に見つかってしまったのだ。

瀬戸は弾丸を全身に喰らい即死。三村も重傷を負う。

三村は懸命に倉庫に逃げ込み、切り札の爆弾を起動し、倉庫の窓をぶち破り脱出。直後、大爆発。

倉庫が全壊するほどの凄まじい爆発で、桐山は即死かと思われたが・・・

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無傷。

無理があるだろ、と言うツッコミは無しにしておこう。

桐山は三村をも上回るスーパー中学生だ。

この後、サブマシンガンの掃射に加え喉仏にトドメの一発を撃ち込まれ三村は死亡する。

飯島は、三村の信用を失うような裏切りをしてしまった事が原因で、三村に殺されてしまった。

三村は、飯島を信用できず殺してしまった事で、瀬戸の信用を失いかけた。

最終的に信用を取り戻す事ができたが、その時にはもうサブマシンガンを持った桐山が近くに居た。

冷静さを失い、状況判断もままならず、見晴らしのいい場所で信用をめぐってやり取りしていた時間があまりに悔やまれる。

もし、飯島が三村を裏切っていなかったら・・・

もし、三村が飯島をそれでも信用できていたら・・・

もし、瀬戸が三村をそれでも信用できていたら・・・

ifやたらればを言っても仕方ないのだが、やはり考えてしまう。

信用に足る行動

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社会的信用とか、人付き合いの中での信用とか、殺し合いのような状況でなくとも信用は重要だ。

人間同士を繋いでいるのは紛れも無く信用、信頼関係。

契約、約束、時間、期限・・・信用が試される場面は多々ある。

恋愛関係もそうじゃないだろうか?

婚約という法的な縛りが無いだけで、魂の契約だ。

相手を不安にさせるような行動は極力慎み合うべきだ。

その時は致命的で無くとも、ひょんな事で信用を失ってしまう可能性は大いにある。

信じる勇気

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それと同時に「疑わしくとも信じる勇気」も必要だと思う。

命を落としかねない、金銭的に多大なダメージを受ける状況ならともかく・・・

たとえ自分が損したり、傷付いたりする可能性があっても信じてあげる事、信頼感を示す事で相手の心は動くと思う。

もし、それでも裏切られたのなら、相手がクズだ。もうチャンスを与えなくてもいい。

確かに馬鹿を見たかも知れないが、裏切られたと嘆くより、そんなクズでも信じた自分を誇りに思おう。
 


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